外貨建てMMFの益出しは本年中が有利!

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こんにちは、東京千代田区の都丸税理士事務所です。

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さて、今回のコラムですが、

債券に関する税制改正

金融所得課税の一体化の流れの一環として、平成28年1月1日以後の債券に関する所得税課税は次のとおりとなります。一部の取扱いを除き、上場株式等と同じ税制になるイメージです。なお、この頁で説明するのは、特定公社債等(国債、地方債、外国国債、外国地方債、公募公社債、上場公社債、公募公社債投資信託、公募公社債等運用投資信託、公募社債的受益権などの特定の公社債をいいます。)に関するものであり、それ以外の公社債等については異なる課税となります。

  • 利子・収益分配金

20.315%の源泉分離課税 → 20.315%で源泉徴収が行われたうえで、申告分離課税(20.315%)。申告不要を選択することも可能。

  • 譲渡益

原則非課税 → 申告分離課税(20.315%)。源泉徴収ありの特定口座の場合には、20.315%で源泉徴収が行われる。

  • 償還益

総合課税(累進税率) → 申告分離課税(20.315%)。源泉徴収ありの特定口座の場合には、20.315%で源泉徴収が行われる。

  • 割引債の償還益

 発行時に18.378パーセントで源泉徴収され源泉分離課税 → 償還時にみなし償還差益に対して20.315%で源泉徴収が行われる。申告分離課税(20.315%)。

その他にも、上場株式等との損益通算が可能になる、譲渡損失が3年間繰越可能となる、特定口座へ受入可能となるといった改正が行われました。

外貨建てMMFの課税がどう変わる?

具体的に外貨建てMMFの課税が平成28年1月1日以後にどう変わるか考えてみましょう。

外貨建てMMFとは外貨建ての公社債投資信託です。そのため、従来の税制では外貨建てMMFを譲渡した場合の譲渡益は非課税とされ、一方譲渡損は課税上ないものとされていました。ところで、外貨建てMMFを譲渡した場合の譲渡損益は、為替差損益を含んだ金額で計算されます。そのため、為替差益狙いで外貨預金で運用している場合の為替差益については、雑所得として総合課税(累進税率)となるところ、実質的に同内容の運用(基本的には元本割れが生じにくい低リスクの金融商品での運用)にもかかわらず、為替差益が非課税となるというメリットがありました。

平成28年1月1日以後は、上述のとおり申告分離課税とされることになりましたので、取得時よりも円安が進み含み益の生じている外貨建てMMFを有している場合には、課税上のことだけを考えると平成27年中に譲渡することが得策といえます。これとは逆に、取得時よりも円高が進み含み損の生じている外貨建てMMFを有している場合には、平成28年1月1日以後に譲渡することにより、上場株式等の運用益と損益通算したり、その損失を繰り越すことが可能になります。

なお、この考え方は外貨建てMMFにのみではなく、外貨建て公社債の譲渡全般に当てはまります。

金融商品によっては慎重に検討する必要がある

いわゆるゼロクーポン債、ストリップス債、低クーポン債、ディファード・ペイメント債といった債券については、従来からその譲渡益は非課税ではなく、総合課税の譲渡所得として取り扱われてきました。総合課税の譲渡所得の計算では50万円の特別控除があり、また、5年以上の長期所有の場合には、長期譲渡所得として1/2が課税所得となります。また、申告分離課税の譲渡所得と異なり、給与所得等の他の所得と損益通算する余地があります。

譲渡益が50万円以下の場合には、(特別控除額以下のため)平成27年中に譲渡すれば課税されませんが、平成28年1月1日以後に譲渡する場合には、20.315%で申告分離課税となるため税額が生じます。譲渡益が50万円を超える場合、平成27年での課税は総合課税(累進税率)であるため、他の所得を含めた課税所得の多寡を考慮して、譲渡のタイミングの有利不利を検討する必要があります。譲渡損失の場合でも、平成27年中に譲渡して給与所得等の他の所得と損益通算した方が良いか、平成28年1月1日以後に譲渡して上場株式等の運用益と損益通算したり、譲渡損失を繰り越した方が良いかを総合判断する必要があります。